外国人材40年に97万人不足 前回推計の倍、獲得競争激化(日経新聞2024.7.3)
政府がめざす経済成長を達成するには2040年に外国人労働者が688万人必要との推計を国
際協力機構(JICA)などがまとめた。人材供給の見通しは591万人にとどまり、97万人が
不足する。国際的な人材獲得競争が激化するなか、労働力を確保するには受け入れ環境の
整備と来日後のつなぎ留めが重要となる。
22年に公表した前回推計は40年時点で42万人が不足するとしていた。今回はアジア各国
から来日する労働者数が前回推計よりも減り、不足人数が倍増すると見込んだ。
ベトナムなどでは「円安で日本行きの希望者が減っている」との声もある。今回は外国為
替市場の影響を予測困難として加味しておらず、不足人数はさらに膨らむ可能性がある。
推計では政府が19年の年金財政検証で示した「成長実現ケース」に基づき、国内総生産
(GDP)の年平均1.24%の成長を目標に設定した。40年にGDPが704兆円、23年比で2割
増となる水準だ。
国内の労働力が減少するなかで目標を達成するには、機械化や自動化がこれまで以上のペ
ースで進んだとしても30年に419万人、40年に688万人の外国人労働者が必要と算出し
た。前回推計は40年に674万人としていた。
海外からの人材供給の見通しも検討した。一般的に送り出し国の1人当たりGDPが一定水
準に達するまで先進国への移住は増えるとされる。経済的に余裕が生じるにつれ、渡航費
用やブローカーへの手数料を支払いやすくなるからだ。
アジア各国について、人口に対する出国者の割合と、このうち日本向けの移住がどの程度
になるかをそれぞれ過去の傾向と経済成長予測から計算した。
各国の成長予測が前回推計時より鈍化し、出国者数は減少すると推測した。この結果、日
本にいる外国人労働者は30年に342万人、40年に591万人と前回予想より減った。外国人
材の必要人数と比べると、30年に77万人、40年に97万人不足する。
厚生労働省によると、外国人労働者は23年10月末時点で204万9千人と前年比22万6千人
増加し過去最多となった。これまで来日が多かったベトナムや中国だけでなく、出身国が
多様化している。
今回の推計で、ベトナムは30年の入国者が22万5千人と新型コロナウイルス禍前の19年比
で8割増となるものの、その後に伸びが鈍化し40年は26万人となった。ミャンマーなど30
年以降に増える国もあるが、全体の不足分を埋めるには至らない。
必要な外国人材を確保するには2つの方法がある。一つは来日人数を増やすことだが、少
子化に悩む韓国や台湾も受け入れを拡大しており、獲得競争は激化する。
もう一つは来日した外国人に長くとどまってもらうことだ。今回の推計は、出入国在留管
理庁の統計を基に62.3%が来日から3年以内に帰国すると仮定した。3年を超えて日本で働
く割合が大きくなれば不足数は縮小する。
政府も動き出している。27年をめどに技能実習に代わる新制度「育成就労」を導入。特定
技能と対象業種をそろえ、3年間の育成就労を終えても特定技能に切り替えやすくする。
こうした政策面の変化は今回の推計には反映されていない。
課題は安定した生活を築くのに必要な日本語力の習得だ。日本語教育推進法は、外国人材
や家族への日本語教育について事業主の責務と定めているが、経営に余裕のない中小零細
企業が自前で教育するのは容易でない。自治体主導で複数の企業が共同で学習機会を設け
るなど、官民で環境整備に努める必要がある。